Googleが検索にAI機能を導入してから、デジタルマーケティング業界では「AIが答えを表示することでウェブサイトのアクセスが減るのではないか?」という懸念が広がっていました。
しかし、Googleが公式ブログで発表した最新データは、多くの関係者が抱いていた不安とは異なる実態を明らかにしています。
この記事では、
- Googleが公表した検索AI機能の影響に関する公式発表の内容
- デジタルマーケティング専門家としての考察
をお伝えします。
INDEX目次
AIがWebサイトのトラフィックに与えている影響
Google検索におけるAI活用は、「AIによる概要(AI Overviews)」と米国から導入が始まった「AIモード」によって大きく進化してきました。これらの機能によって、従来よりも複雑で長い質問や新しいタイプの検索が可能になり、ユーザー満足度が高まっているとGoogleは報告しています。
ここからは、2025年8月8日に投稿されたGoogleの記事(※1)を参照しながら、AIがWebサイトのトラフィックに与えている影響を詳しくみていきましょう。
※1:検索における AI : クエリ数が増加しクリックの質が向上
オーガニック検索のクリック数は安定を維持
Googleによると、Google検索からWebサイトへのオーガニック検索によるクリック総数は、前年比で安定して推移していることがわかりました。さらに、「クリックの質」が向上していることについても言及しています。
ここでいう「質の高いクリック」とは、訪問後にすぐ検索結果へ戻る“早期離脱”をしないクリックを指します。Googleは「質の高いクリック=そのサイトに興味を持っているサイン」と位置づけており、その数は1年前に比べわずかに上回っていると公表しました。
この結果は、「総トラフィックが大幅に減少した」と示唆する第三者によるレポートとは対照的です。Googleは、このような結果を示す第三者のレポートには、計測手法が不完全だったりごく一部の事例を取り入れていたりしているケースがみられるとしています。
クリック品質向上の背景
それでは、なぜクリックの質は向上しているのでしょうか?
Googleは、その背景として以下の2点を挙げています。
- より長く複雑な内容や新しい種類の質問を、より多く検索するようになった
- AI Overviewsに表示されるリンクの数が以前よりも増加した
検索回数とリンクの増加は、「Webサイト表示・クリックされる機会の増加」を意味します。
例えば、「次の満月はいつ?」のようにシンプルな答えを求める質問の場合、ユーザーはAIによる回答だけで満足するかもしれません。しかし、それ以外の質問では、トピックを掘り下げたり商品を購入したりするために、気になるWebサイトをクリックするユーザーもいるでしょう。
つまり、現代のユーザーはAIが生成した概要を読んだうえで、より深く知るためにクリックという行動を起こしているのです。このような質の高いクリックは問い合わせや購入につながりやすいため、非常に価値が高いと考えられています。
AI時代に成功するWebサイトとは?
先述のとおり、GoogleはWebサイトの全体的なトラフィックは比較的安定していると公表しています。しかし、実際にはトラフィックが減少するサイトもあれば、増加するサイトもあるのが正直なところでしょう。
では、AI時代に「目的を達成できるWebサイト運営」を実現するには、どうすればよいのでしょうか?その答えとして、「ユーザーに積極的に求められクリックされるコンテンツ」を提供することが挙げられます。
具体的には、以下のようなものです。
- 実際の体験者や当事者の生の声が聞けるコンテンツ
例:掲示板、動画、ポッドキャスト、個人の投稿など - より深く学べるコンテンツ
例:詳細なレビュー、オリジナルの記事、独自の視点、個人の深い考察など
このような利用者のニーズを満たすサイトはこのトレンドの恩恵を受けており、トラフィックが増加する傾向にあります。
「WebかAIか」ではなく「WebもAIも」
GoogleはAI機能の開発において、Webコンテンツを目立たせる独自のアプローチを採用しています。
- Webを深く理解し、適切なタイミングで適切なリンクを表示できるよう学習
- AIによる回答ではリンクを目立つように表示する
- 引用元や出典を明示する
上記のような取り組みで、Webサイトとユーザーの両方にとって価値のある仕組みを維持。つまり、「ウェブかAIか」の二択ではなく「ウェブもAIも」という考え方が、今後は重要になってくるとしているのです。
さらに、Googleはオープンウェブ(※2)の原則を尊重しています。そのため、今後もWebサイト運営者が自社コンテンツの検索での表示方法をコントロールできる仕組みを維持していくと明言しています。
※2:Webサイトやコンテンツの構築・公開・閲覧は、オープンな規格や技術、思想にもとづいて行われるべきという考え方
【考察】今後のデジタルマーケティング戦略、どうしていけばいいの?
ここからは、デジタルマーケティングの専門家として、今後のデジタルマーケティングで意識したいポイントを紹介します。
「数より質」のSEO戦略へ転換する
Googleのデータで明らかになった「クリックの質向上」。これは、従来の「とにかくアクセス数を稼ごう」という考え方から、「本当に価値のあるユーザーに来てもらおう」という方向へのシフトが加速していることを示しています。
これからは、単純にPV数だけを追いかける時代ではなくなっていくでしょう。「自社のターゲット・ユーザーが何を求めているのか?」をしっかり理解して、その答えを提供できるコンテンツを提供しなければいけません。
特に重要なのは、AIが答えを出したあとに「もっと詳しく知りたい」と思ってもらえるコンテンツの制作です。これこそが「AIにはない付加価値」となり、差別化ポイントになります。
AIでは代替できない一次情報コンテンツを制作する
AI検索時代において重要なのは、AIでは代替できない一次情報をメインとしたオリジナルコンテンツの制作です。Googleが評価しているコンテンツの特徴をみると、これからのコンテンツマーケティングで重視すべき方向性がみえてきます。
今後、コンテンツを作成するうえで意識したいポイントは以下のとおりです。
- 実体験にもとづく一次情報の発信:実際の使用レビューや導入事例など
- 専門的な深掘りコンテンツ:他では得られない詳しい分析や考察など
- ユーザー参加型のコンテンツ:ユーザーの交流を生み出せる掲示板など
大切なのは、「ここでしか得られない情報・体験」を提供することです。
AIが提供できるのは、整理された一般的な情報だけです。それを超える独自の価値を提供できれば、必ずユーザーのクリックは獲得できます。
また、AIに引用されるには、口コミや他の専門機関などからの評価も重要です。第三者からの客観的な評価は、情報の信頼性を示すひとつの指標になると考えられています。
変化するユーザーの行動に対応する
AI検索を使うユーザーは、サイトを訪問する時点で、すでにある程度の予備知識を持っています。見方を変えると、「初心者向けの基本説明」よりも「もう一歩踏み込んだ詳細情報」を求めているユーザーが増えたと考えることができるでしょう。
この変化へ対応するには、LPの作り方やコンバージョンまでの導線設計を見直さなければいけません。
例えば、「SEO やり方」というキーワードを狙う場合、ユーザーはAI Overviewsで「SEOの基本的な戦略」について知っている状態でサイトを訪問すると想定されます。そのため、単にSEOの基礎知識を並べただけのコンテンツでは、ユーザーのニーズを満たすことはできないのです。この場合は、「実際に大きな成果を出したSEO戦略の自社事例」「よくある失敗パターン」といった独自コンテンツがあると、高い価値を提供できるかもしれません。
サイトに訪問するユーザーの「質」が上がっている今、コンテンツもCTA(行動を促すボタンや文言)も、それに見合った深いレベルで設計することが重要となります。
AI流入の傾向や勝ち筋を見つける
「クリックの質」の重要性が高まっている昨今、PV数や滞在時間(ページが開かれてから閉じられるまでの「物理的な時間」)といった従来の測定指標だけではWebサイトの成果を評価することは困難になりました。たとえページが開かれたとしても、実際は閲覧行動につながっていないケースが珍しくないためです。
重要なのは、「AIに引用される頻度・インプレッション数の傾向」と「指名検索や特定記事への流入数」の因果関係をみつけることです。そうすることで、より成果につながるコンテンツや施策を見極められ、自社に適した戦略や予算配分を実現しやすくなります。
今後はGA4やGoogle Search Console以外の計測ツール・手法も必要になっていくでしょう。例えば、ヒートマップツールや簡単なポップアップアンケート、UI/UXのABテストなどが活用できます。
ブランディング戦略に力を入れる
AI検索時代にデジタルマーケティングで成果を挙げるには、検索結果に表示されることだけでは不十分です。
これからは、「検索されてから見つけてもらう」戦略だけではなく、「検索される前から第一想起を獲得する」ブランディング戦略も重要となります。ユーザーがニーズを抱いたとき、真っ先に思い浮かべてもらえれば、検索順位やAI機能の動向に振り回されない安定した成果が期待できるでしょう。
ブランディングを成功させる具体的な取り組みとして、以下のような方法が有効です。
- ストーリーテリングで共感を生み出し、顧客をファンへ育成する
- SNSやコミュニティなどを用いた双方向コミュニケーションで、感情的なつながりを築く
- ブランド体験に一貫性を持たせ、自社ならではの世界観を作り出す
- 限定コンテンツや特別オファーなど、特別感を演出する
AIで簡単に情報収集できる時代だからこそ、数値や機能の説明だけでは表現できないブランドの「らしさ」や「価値観」が大きな差別化ポイントになります。ユーザーの記憶に残り、第三者にもおすすめしてもらえる好循環を創出できれば、長期的な競争優位を築けるでしょう。
CRM戦略で顧客との関係性を深める
AI検索時代に企業が安定して利益を上げるには、新規集客だけでなく、一度獲得した顧客をつなぎとめるCRM(顧客関係管理)施策も重要です。新規顧客獲得コストが上昇傾向にある昨今では、既存顧客との関係を深めて安定した利益を確保することが、ビジネス全体の安定性向上につながります。
CRM施策を実施することで、以下のような効果が得られます。
効果 | 具体的な施策例 |
購入まで至らなかったユーザーへの接点創出・購入促進 | カゴ落ち・離脱ユーザーへのフォローアップメール配信無料セミナー・ウェビナーによる段階的な関係構築 |
LTVの向上 | 購入・契約履歴にもとづいた提案(購入金額の向上)VIP会員制度・ロイヤルティプログラムの導入(購入頻度の向上) |
休眠顧客の発掘 | アンケートで離脱の理由を把握し、個別で対応する休眠期間に応じたメッセージやクーポンを配信する |
CRM戦略で蓄積される顧客情報などのファーストパーティーデータは、AIがアクセス・学習できない貴重な情報資産です。このデータを積極的に獲得・活用していくことで、競合他社と大きく差別化できるでしょう。
まとめ
GoogleのAI検索機能について心配されていた「Webサイトのアクセスが減るのでは?」という懸念は、公式データを見る限り実際に起きていることがわかりました。その一方で、クリックの質は向上しているという、うれしい結果も出ていました。
ただし、これは「今までどおりWebサイトを運用していればOK」という意味ではありません。ユーザーの検索行動が変わった以上、私たちのマーケティング戦略も変える必要があります。
AI時代に求められるのは、AIには提供できない「あなた(企業)ならではの価値」です。この変化を“脅威”ではなく“チャンス”と捉えて戦略をアップデートできる企業が、これからは勝ち残っていきます。
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WRITING 執筆

藤原 洋平
Google、Yahoo! JAPANを中心としたリスティング広告、Facebook、instagram、X(旧Twitter)、LINEを中心としたSNS広告、アフィリエイト広告、インフルエンサーキャスティングなど、webマーケティング全般を手掛ける。
これまで数多くのセミナー・ウェビナーに登壇。書籍「BtoBマーケティングの基本 IT化のインパクトを理解する12 の視点」(日経BP)を執筆。