ジェイアール東日本企画(jeki)が提供するOOHプラットフォーム「MASTRUM」が、いま広告業界で大きな注目を集めています。
屋外広告(OOH:Out Of Home)は、駅や電車内、街中の看板など、家の外で接触する広告メディアとして長く親しまれてきました。自然な形で消費者にリーチできるOOHは「プロモーションメディア」として多くの企業に活用されていましたが、「広告を見た人数がわからない」「投資対効果が測定できない」という根本的な課題を抱えていました。
MASTRUMが注目を集めている大きな要因は、これらの課題をデータ活用によって解決し、「測定可能で最適化できるOOH広告」を配信できる点にあります。
本記事では、従来のOOH広告が抱える課題と、それをMASTRUMがどのように解決できるのかについて詳しく解説します。
なお、OOH広告についてはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
従来のOOH(屋外広告)の課題
近年、OOHを「第3のメディア」として広告戦略に活用する企業が増加傾向にあります。実際、総務省が行った「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」では、OOHの広告費は世界的に年々増加傾向にあることがわかりました。
このように世界的にも注目されているOOHですが、実は多くの課題を抱えています。それが、「見えない効果、測れない価値」というポイントです。
まずは、従来型のOOHが抱えていた課題について詳しくみていきましょう。
どれだけリーチできたのかを把握しにくい
屋外や公共交通機関に掲載されるOOHは、多くの消費者にリーチできる点が大きな強みです。しかし、「誰がいつどれだけ広告を見たのか」「どれだけ記憶に残ったのか」といった定量評価は困難です。
例えば、従来の「人通りカウンター」などの物理的測定では、あくまで“通過した人数”しか把握できません。また、街頭インタビューなどのサンプル調査は、コスト・時間がかかるうえに、調査地点や時間帯によって大きく結果が変動するという問題がありました。
このように、従来型のOOHには客観的な成果指標が存在していないので、広告主がリーチの規模や質を正確に判断することは難しかったのです。
投資対効果を算出できない
従来のOOH広告が抱えていた深刻な問題のひとつとして、投資対効果(ROI)の算出が難しいことも挙げられます。
企業の広告投資において、「どれだけの費用対効果があったのか」を数値で示すことは、経営判断の根幹となります。しかしOOHは、広告出稿後の売上向上や来店数増加との因果関係を証明することが困難です。そのため、「OOHを出稿したから売上が上がった」のか「他の要因によるものなのか」を判断することができませんでした。
また、複数のエリアに同時展開した場合の、媒体別・エリア別のパフォーマンス比較も容易ではありません。
「どの立地や媒体が最も効果的だったのか」を客観的に評価できなければ、OOHへの投資判断は「感覚」や「経験則」に頼らざるを得なくなります。この効果測定の難しさが、データドリブンなマーケティング戦略の障壁となっていたのです。
クロスメディア効果の計測が難しい
現代のマーケティング戦略では、複数のメディアを組み合わせた統合的なアプローチが重要です。しかし、従来のOOHは、オンラインとオフラインの施策が分断されていることが多かったため、クロスメディア効果の計測が困難でした。
例えば、Web広告とテレビCM、OOHを同時に展開した場合、「どのメディアがどれだけ貢献しているのか」を正確に把握することができません。顧客の購買行動における各メディアの役割や相互作用を理解できないので、統合マーケティング戦略におけるOOHの位置づけが曖昧になりがちでした。
マーケティング予算をどのように配分すればよいかを判断できなければ、全体的な広告効果の最大化は妨げられてしまうでしょう。
「MASTRUM」とは?
こうした従来のOOH広告の課題を解決するために登場したのが、ジェイアール東日本企画(jeki)が提供する「MASTRUM」です。MASTRUMは、国内のデジタルOOH(Out Of Home)メディアを対象とした革新的な広告取引プラットフォームです。
ここまでに紹介したとおり、従来のOOHには「見えない効果、測れない価値」という根本的な問題がありました。MASTRUMは、最新のデータ分析技術とデジタル化により「測定可能で最適化できるデジタルOOH」を実現しています。
MASTRUMの特徴
MASTRUMには、2つの大きな特徴があります。
- 掲載媒体が豊富
- 視認者数の可視化を実現
ここでは、MASTRUMならではの強みを詳しくみていきましょう。
掲載媒体が豊富
MASTRUMの最大の特徴は、JR東日本のメディアに唯一接続されているSSP(Supply Side Platform)である点です。駅構内や電車内のデジタルサイネージはもちろんのこと、従来の非デジタルメディアまで、他では取り扱えない独自の広告在庫を取引することが可能となっています。
例えば、「東京駅」の丸の内に勤務する会社員をターゲットに、丸の内出口の自動改札ステッカーを出稿した場合で考えてみましょう。同社の試算によると、この場合の広告接触チャンスは1日当たり70万回、リーチ数は35万人にものぼるとされています。※
このように、JR東日本のネットワークを活用することで、首都圏を中心とした膨大な通勤・通学層へのリーチを実現できるようになるのです。競合他社では提供できない、価値ある広告枠を確保したい企業に最適です。
※出典:ジェイアール東日本企画|キクコトOOH「【OOH広告の効果測定】データで評価する手法を解説」
視認者数の可視化を実現
MASTRUMが業界で注目されている理由が、これまで数値化が困難だった視認者数(インプレッション)を独自技術によって算出できる点です。以下のように、さまざまな技術を用いて効果測定を行っています。
- 位置情報・鉄道データを活用した乗車推定
→ビーコンやGPSデータを解析し、山手線・山手線以外の鉄道路線利用を生活者ID単位で推測 - リアル行動ビッグデータ
→国内合計1.5億IDのGPSデータ・ビーコンデータにより、屋外と屋内の行動を把握 - データ計測
→ビーコンやGPSを鉄道データや調査データで補正・拡大推計し、広告枠単位でのインプレッションを算出
これらの技術によって、媒体接触者の性別・年代といった属性情報を時間帯別に算出できるので、ターゲット層への到達度を具体的に把握できます。なお、効果測定に使用されるシステム・機器は、媒体ごとの環境に応じて選定されます。
広告配信後は、詳細なレポートを提供。掲出した広告がどれくらいのターゲットにリーチできたのか、数値として見ることが可能です。
MASTRUMを活用すれば、デジタルOOH出稿における効果検証が格段に行いやすくなります。
MASTRUMを活用するメリット
MASTRUMの強みは、以下の4点です。
- さまざまな広告配信レポートが見られる
- 柔軟にプランニングできる
- 多様な媒体に配信できる
- 配信を最適化しやすい
それぞれどのようなことなのか、詳細を説明します。
さらに、MASTRUMの販売権を有している数少ない代理店であるゴンドラに依頼することで、さらなるメリットの最大化が目指せます。詳しくは、こちらをご覧ください。
さまざまな広告配信レポートが見られる
MASTRUMでは、従来のOOH広告では得られなかった詳細なデータを多角的に分析できます。提供可能なデータは、以下のとおりです。
- 配信面数
- インプレッション(推定視認者数)
- リーチ
- フリークエンシー
- 曜日別・時間帯別インプレッション
- 時間帯別性別年代分布
- 曜日別性別年代分布
さまざまなデータと連携することで、来店計測も可能です。
柔軟にプランニングできる
MASTRUMは、性別年代別や趣味志向でのターゲティングが可能です。そのため、「狙いたい場所で狙いたい時間帯に配信」という精密なプランニングが実現できます。
従来の予約型(トラディショナル)出稿に加え、新たに場所や時間帯を自由に選べる運用型(プログラマティック)出稿にも対応。キャンペーンの目的や予算に応じて、最適な配信方法を選択できます。
多様な媒体に配信できる
MASTRUMのネットワークは13万面を超えるスクリーン数を誇るので、広範囲にわたる媒体への配信が可能です。また、TRAIN TVを放映するスクリーン数がギネス世界記録に認定されるなど、配信面の多さはトップクラスです。
駅構内のデジタルサイネージから街頭の大型ビジョンまで、多様な媒体を一元管理できることで、効率的な広告運用を実現します。
配信を最適化しやすい
MASTRUMでは、データ提供パートナーを増やすことで、さまざまなデータを組み合わせたターゲティングを実現。組み合わせるデータを増やしていくことでターゲティングの精度を高め、「ふさわしい場所・ふさわしい時間・ふさわしい人に広告出稿できる仕組み」を構築しています。
OOHは、出稿したからといって必ずしも成果につながるわけではありません。期待する成果を得るために、データにもとづいて出稿状況を最適化できるプラットフォームを選ぶことが大切です。
「MASTRUM」のサービス内容
ここからは、MASTRUMの詳しいサービス内容を紹介します。
出稿可能メディア
MASTRUMでは、デジタルサイネージからポスター掲出まで、幅広いメディア形態に対応しています。
特に、従来のトラディショナルなメディアと、駅・電車のデジタルメディアの両方を取り扱える点が大きな強みです。ブランドの認知度向上から購買促進まで、さまざまなマーケティング目標に対応した効果的な広告配信が可能です。
出稿方法
MASTRUMは、広告の目的や希望する運用方法をふまえ、以下の2つから自社に適した出稿方法を選択できます。
予約型(トラディショナル運用)
従来型の予約ベースでの出稿方法です。
特定の媒体・期間を事前に確保する方式で、大規模キャンペーンや長期ブランディング施策に適しています。掲出が確実に保証される一方で、柔軟性には限界があります。
運用型(プログラマティック配信)
リアルタイムでの入札により、最適な媒体・時間帯・ターゲットに配信する方式です。
データにもとづいた効率的な広告配信が可能で、短期的なプロモーションやターゲティングを重視する施策に適しています。また、潜在層へのアプローチにも有効です。
配信形態
配信形態は、以下の3つから選択できます。
※以下で紹介するプラン名称は、ジェイアール東日本企画の公式名称とは異なり、当社において独自に用いられている呼称です。
配信時間帯指定型プラン
期間・時間帯・予算を事前に設定する、枠保証型のプランです。配信枠を選んで購入できるので、商材のターゲットとなるお客さまにピンポイントで訴求できるというメリットがあります。
事前に決められた枠での配信が保証されるため、安定的な露出を確保できる点が特徴です。キャンペーンの計画性を重視し、確実な広告配信を求める企業に適しています。
KDDIデータ利用型プラン
キャンペーンの目的に応じて、KDDIデータを活用した「セグメント×行動データ」により、高精度なターゲティング配信が可能なインプレッション保証型のプランです。対象セグメントや時間帯を柔軟に調整でき、街頭デジタルOOHや駅広告、車両広告など幅広い場所への掲出ができます。
例えば、「男性オフィスワーカー」「アニメ好きの女性」といったセグメント同士をかけ合わせた指定が可能です。また、ターゲットが多いエリアに絞った配信もできます。ターゲティングの精度を高め、広告費のムダを防ぎたい場合に適しています。
インプレッション増量型プラン
一定期間の出稿で、通常料金以上の露出を保証する販売形態です。特に需要が高い朝・夜以外の空いている広告枠を活用するので、低コストで多く配信できる点が特徴です。
配信枠を指定することはできませんが、予算が限られている中小企業や、テスト的な施策を実施したいときは便利に活用できるでしょう。
【事例】デジタルOOHで得られる効果や事例
実際に、「デジタルOOHをプランに組み込むとどれくらい指名検索キーワード数が増加するのか」を検証したモデルケースをみてみましょう。
対象キャンペーン | キャンペーンの告知 |
出稿媒体 | Web広告・デジタルOOH |
調査期間 | 【2023年】2022/12/26~2023/1/1 【2024年】2024/1/1~2024/1/21 |
調査手法 | Google Search Consoleを用いた定量調査 |
対象クエリ | 「指名検索キーワード」 |
備考 | 年末年始の数値は2022年12月と2023年1月の数値変動率を係数122%とし、調整 |

調査の結果、Web広告のみを配信した場合に比べると、Web広告×デジタルOOHをかけ合わせた場合は、指名検索キーワード数が233%も増加しました。表示回数はもちろんのこと、クリック数も大幅に向上しています。
この結果から、デジタルOOHをプランに組み込むことで、非常に高い認知効果が期待できることが判明しました。
デジタルOOH広告のご相談はゴンドラまで!

株式会社ゴンドラでは、Web広告とデジタルOOHを掛け合わせた統合的なマーケティング支援を提供しています。
「ゴンドラ×MASTRUM」の強みに迫るため、株式会社ゴンドラ MASTRUM事業部 小田さんにインタビューしました。
デジタルOOHの効果最大化なら「ゴンドラ×MASTRUM」
ゴンドラによるMASTRUM運用には、以下の3つのメリットがあります。
Web視点のノウハウを活かしたスピーディな運用が可能
ーゴンドラにMASTRUM運用を依頼すると、どのようなメリットがありますか?
ゴンドラならではの強みは、MASTRUM配信結果に加えて、Google Analytics 4(以下、GA4)やGoogle Search Consoleなどのツールを用いたWeb視点からの改善提案が可能な点です。
-MASTRUMとGA4やGoogle Search Consoleを組み合わせると、どのような効果が期待できるのでしょうか?
2025年現在、MASTRUMをはじめとしたデジタルOOH広告ではコンバージョン(CV)を直接追跡することは困難な状況です。期間比較による仮説立ては可能ですが、直接的な因果関係の証明には限界があるというのが正直なところです。
そこで当社では、投資対効果を可視化する手法の一つとして「指名検索数の比較分析」を実施しています。
例えば、Google Search Consoleを活用すると、期間比較で「Web広告のみの場合」と「Web広告+MASTRUMの場合」の指名検索数を比較できるようになります。デジタルOOHがWebへ与えた影響(サーチリフト効果)を数値化すれば、効果的な改善策の提案や精度の高い効果検証が可能です。
クロスメディア効果の測定が可能
ーOOHの大きな課題となっているクロスメディア効果の計測に関しては、どのように取り組んでいますか?

ゴンドラでは、これまでのWeb施策で培ってきた豊富なノウハウとMASTRUMを組み合わせることで、独自のクロスメディア効果測定サービスを提供しています。
MASTRUMを活用したクロスメディア効果の測定の手法は、次のとおりです
- Google Search Consoleによる指名検索経由でのセッション数比較
- Google広告キーワードプランナーを使った検索数推移の比較分析
このように、さまざまなツールを活用することで、デジタルOOH広告とWeb施策の相互作用を把握しやすくなります。
リアルの行動とWeb上でのアクションは、必ずしも連動しているとは言い切れません。しかし、ゴンドラが長年蓄積してきたデジタルマーケティングの知見とMASTRUMのデータを組み合わせれば、各メディアの貢献度を高精度で推測することが可能になります。
予算全体を任せられるトータルプランニング力
ー予算配分やメディア選定についても相談できるのでしょうか?
はい、ゴンドラでは予算を丸ごとお任せいただくことで、より効果的な提案が可能になります。Web広告とデジタルOOH双方の知見を持つ当社だからこそ、お客様の目標に対して最適なメディア選定やチャネル配分をオーダーメイドでコーディネートできます。
単一のメディアに偏った施策ではなく、予算全体を俯瞰してバランスの取れた配分を行うことで、予算の無駄を防ぎ、費用対効果の高いマーケティング戦略を実現します。
ー戦略立案から実施まで、どのような体制でサポートしてもらえるのでしょうか?
戦略立案からクリエイティブ制作、効果測定・改善策の提案まで、社内の専門家が一貫して内製対応しています。そのため、スピード感を持った対応と品質の担保の両立を実現しています。
お客様の課題や目標に応じて、マーケティング戦略の設計からクリエイティブの企画・制作、配信後の効果分析まで、社内のプロフェッショナルチームが責任を持って対応いたします。
デジタルOOH以外のマーケティング施策もお任せください!
ゴンドラでは、MASTRUMを活用したデジタルOOH戦略だけでなく、Web広告やSNS運用など幅広いデジタルマーケティング施策に対応しています。
デジタルマーケティングで培った豊富なノウハウを活かし、オンラインとオフラインの施策を戦略的に連携させることで、相乗効果の最大を実現。さらに、単なる集客にとどまらず、カスタマーエンゲージメントを意識した顧客関係構築まで視野に入れた、継続的な支援を提供しています。
自社でワンストップ対応しているからこそ、全体的なマーケティング戦略の設計から効果測定・改善まで、スピーディで質の高いサポートが可能です。
データドリブンなデジタルOOH広告で新たなマーケティング領域を開拓したい企業は、ぜひ一度ご相談ください。経験豊富な専門チームが、一社一社に適したオーダーメイドの支援で課題解決と目標達成をサポートいたします。
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