マーケティング施策で狙った成果を出すために必要な予算獲得の考え方とは?

マーケティング施策で狙った成果を出すために必要な予算獲得の考え方とは?

マーケティング施策の実施にあたっては、当然ながら予算が必要です。必要な予算を獲得するには、かけたコスト以上の成果が得られることを示す必要があります。そのため、施策の立案にあたっては費用対効果を算出し、予算獲得の根拠とします

本記事では、マーケティング施策を実施するにあたり、スムーズに予算を獲得し、成果につなげるための考え方を解説します。あわせて、BtoC、BtoBそれぞれでよくある施策について事例も紹介しています。

必要な予算を獲得するための根拠がほしい、検討中の施策について最適な予算がわからないといった方に特に役立てていただけるはずです。

マーケティング施策に必要な予算を獲得するポイント

マーケティング施策を実施するために十分な予算を獲得するには、成果とコストのバランスを考えながら、できるだけ費用対効果が高くなるよう施策を立案することが重要です。

施策により見込まれる成果は、マーケティング部の目標を達成するものであると同時に、会社全体の目標達成にどう貢献できるのかも考えましょう。会社にとっての施策の価値を明確にできると、予算を獲得しやすくなります。

予算を意識して日頃から費用対効果の高い施策を実施できていると、新たな施策を実施するときに予算を獲得しやすくなるでしょう。

成果を出すために必要な予算獲得の3つの考え方

マーケティング施策に必要な予算の獲得にあたっては、その施策に求められる成果を目標として設定し、そのためにかかるコストを正確に算出したうえで、費用対効果が高くなるよう施策を設計することが基本です。

KGIとKPIの設定により目標を明確にする

マーケティング施策の立案では、まずKGIを確認したうえで、KPIを設定します。

KGIとKPIはそれぞれ以下のような意味と関係性があります。

指標概要具体例
KGI(Key Goal Indicator)最終目標達成指標の略。
組織やプロジェクトなどの最終目標の達成度合いを測る定量的な指標。
・新規契約数新規リード
・獲得数
・契約単価
KPI(Key Performance Indicator)重要業績評価指標の略。
KGI達成に向けての進捗を表す指標で、KGI達成のために必要な具体的な施策とその成果が設定される。
・年間売上
・高利益率

まず、マーケティング部および会社としてのKGIを確認します。施策立案は基本的にマーケティング部のKGIに基づいて行いますが、会社全体のKGIも確認しておくことで、その施策が会社全体において持つ価値を意識できるでしょう。

KGIを確認したら、それを達成するために必要な施策と各施策において目標とする成果を、KPIとして設定します。

その際、市場動向や自社の顧客データ、過去の施策実施データを参考に、現実的に達成可能な目標を設定しましょう。自社に蓄積されたデータが十分でない場合は、競合の事例も参考にします。

施策実施にかかるコストを明確にする

KPIを設定したら、各施策を実施するためにかかるコストを算出します。

その際、必要な人員と工数も合わせて算出します。社内のリソースで対応しきれない場合は一部を外注することになるので、そのためのコストもかかります。

社内の人間が動く分は費用対効果を測る際のコストには入れませんが、どれだけの人員と時間が割かれることになるのかは把握しておきましょう(※1)。一見コストが低いように見えても、社内リソースへの負担が大きく他の業務に支障をきたすようであれば、施策の内容ややり方を変えるべきです。

運用型広告などコストが変動する施策については、かけて良いコストの上限を決めます。目標とする成果を得るためにどの程度のコストをかければ良いのかは、過去に実施した施策のデータを参考にしましょう。

自社に蓄積されたデータが十分でない場合は、競合の事例も参考にします。制作会社や広告代理店など外部の企業を利用する場合は、その企業が手掛けてきた事例も参考になります。

※1今回は、広告宣伝費、外注費(業務委託費)、システム(ツール)関連費用をコストとしてカウントしております。

ROI(費用対効果)の算出により予算を獲得する

目標とコストが明確になったら、費用対効果を算出します。

費用対効果を求める基本の計算式は「費用対効果=期待効果ー想定費用」です。この計算式では、金額で費用対効果が算出されます。

費用対効果には、上記以外にもいくつかの指標があります。そのなかで、マーケティング施策の費用対効果の算出によく使われるのが「ROI」です。

ROIは「Return On Investment」(訳:投資利益率)の略で、投資額(≒コスト)に対して得られた成果を利益率(%)として算出します。計算式は「ROI=利益/費用×100」です。

費用対効果を金額ではなく%で算出することで、コストの異なる複数の施策や、規模の異なる事業について、成果を比較しやすくなります

費用対効果が算出できたら、検討中の各施策について、その費用対効果が十分なものであるか確認します。「期待効果-想定費用」がマイナスあるいはROIが100%未満になる場合、かけたコスト以上の利益が出ないことになります。

マーケティング施策の予算を獲得する際には、「期待効果-想定費用」がプラスあるいはROIが100%以上になるよう施策を設計しましょう。基本的にはその値が大きくなるほど費用対効果が高く、予算を獲得しやすくなります。

ROIを計算するときの注意点

注意点として、ROIの基準は業界や商材によって変動します。自社の業界や商材について、ROIの基準をあらかじめ確認しておきましょう。

「期待効果-想定費用」がプラスあるいはROIが100%以上にならない場合でも、施策実施により、

  • 生産性向上
  • 業務改善効果

などが見込まれる場合は、どのくらいの期待効果を金額換算し、費用対効果で説明できると予算獲得できるケースもあります。

なお、マーケティング施策のなかでも広告については、費用対効果を測るのに「ROAS」という指標を使うのが一般的です。

ROASは「Return On Advertising Spend」(訳:広告の費用対効果)の略で、「ROAS=広告経由の売上/広告費×100」で求められます。計算式からわかる通り、ROASもROIと同じく%(パーセンテージ)で示される指標です。

マーケティング予算獲得の事例

ここまで説明してきたことを具体的にイメージできるよう、BtoCおよびBtoBそれぞれのマーケティングの予算獲得について、具体的な施策内容と数字を例にあげて紹介します。

実際にはもっといろいろな要素が影響しますが、考え方の基本として参考にしてください。

BtoCマーケティング

BtoCマーケティングで効果的な施策のひとつに、LINEの活用があります。LINEはメルマガよりも開封率やクリック率が良いといわれ、活用を進めるBtoC企業が増えています。

LINEを活用するためには、まず、友だち登録を増やす必要があります。また、LINE経由で購買(CV)を得るために効果的な手段がクーポン訴求です。

これらの施策について、予算を獲得するための考え方を紹介します。

ここでは一例として、40~50代女性向けの健康食品・サプリについて、LINEでクーポン訴求をするケースを考えます。LINE友だち登録の導線はLPで、登録による特典があるものとします。

LINE友だち登録の目標

STEP1. 売上目標(KGI)の設定

まず、KGIを確認します。

ここでは、KGIを売上目標として、マーケティング部の売上目標のうちLINE経由で獲得すべき売上目標を3億円とします。

STEP.2 既存友だちからの予想売上を算出

次に、既存の友だち数から想定される売上を算出します。

ここでは、既存のLINE友だち数が7,500人クーポン訴求からの購買率(CVR)が5%であるとします。購買率(CVR)は過去のデータなどを基に算出します。

さらに、過去の顧客データなどを基に、平均的な購入サイクルと顧客単価(LTV)を算出します。ここでは、購入サイクルが2ヵ月、1回あたりの平均単価が2万5,000円で、顧客単価(LTV)が15万円であるとします。

これらの数値から、既存のLINE友だちに対してのクーポン訴求で期待できる売上を計算すると、7,500人×5%×15万円=約5,600万円となります。目標とする売上3億円を達成するには、約2億4,400万円の売上アップが必要な状態です。

STEP3. 新規獲得目標(KPI)の設定

ここからさらに約2億4,400万円の売上をあげるためには、新規LINE友だちが何人必要なのかを算出します。

過去の顧客データなどを基に、新規LINE友だちのクーポン訴求からの購買率(CVR)を7%とします。顧客単価(LTV)は先ほどと同じ15万円とします。

これらの数字から、LINE経由での売上目標:3億円を達成するためには、(新規LINE友だち数)×7%×15万円=約2億4,400万円となれば良いので、この式を計算すると、必要な新規LINE友だち数(KPI)は2万3,214人となります。

LINE友だち登録にかかるコスト

LINEの友だち登録1人あたりにかかる獲得単価をCPFと表します。CPFは「Cost Per Friends」の略です。ここでは、CPFを400円とします。

ここから、KPIである新規LINE友だち数2万3,214人を達成するには、400円×23,214人=928万5,600円のコストがかかることがわかります。

費用対効果の算出と予算獲得

新規LINE友だちから見込まれる売上が約2億4,400万円で、新規売上に占める新規獲得コストは約3.81%(人件費、Web制作費、販管費等を除く)となります。

ここから、費用対効果は問題ないと判断できます。そしてこれらの数字を整理して、予算獲得のための根拠とします。

BtoBマーケティング

BtoBマーケティングで効果的な施策のひとつに、ウェビナーがあります。

ウェビナーは、展示会やリアルのセミナーよりも気軽に参加できるので、テーマに関心のある幅広い人にアプローチできるメリットがあります。一方で、気軽に参加する人が多い分、問い合わせや成約につながりにくいというデメリットもあります。

それを踏まえて、ウェビナー開催のための予算を獲得する際の考え方を紹介します。

なお、ウェビナーについては、業界業種によって数字が大きく変動します。また、実際には参加者の企業重複率も考慮する必要がありますが、ここでは簡易的なイメージとして参考にしていただければと思います。

ウェビナー開催の目標

STEP1. 売上目標(KGI)の設定

まず、KGIを確認します。ここでは、全社の今期売上目標を50億円として、マーケティング部の売上目標を8億円とします。顧客単価は2,000万円(年間予算)で、成約40件でマーケティング部の売上目標が達成されます。顧客単価は既存の顧客データなどを参考にします。

そして、マーケティング部の売上目標8億円のうち、ウェビナー経由での売上目標を2億円とします。必要な成約件数は10件で、マーケティング部の売上目標の25%を担う施策となります。

STEP2. 新規獲得目標(KPI)の設定

ここから、ウェビナー経由での売上目標2億円を達成するために、ウェビナー申込を何名獲得すれば良いのか逆算します。

まず、過去のウェビナー開催のデータなどを基に、ウェビナー申込者が成約に至るまでの各段階の転換率を算出します。ここでは、例として以下の数字を設定します。

  • ウェビナー申込者のウェビナー参加率:70%
  • ウェビナー参加者の面談率:10%
  • 面談からの商談率:20%
  • 商談の成約率:15%

なお、面談はオンライン想定です。また、上記商談率を実現するには、質の高いフォローが必要です。また、成約率はクロージング力が高めの場合を想定しています。

これらの数字をあてはめると、ウェビナー経由の成約10件を達成するためには、ウェビナー申込者数4,762名が必要となります。これが、ウェビナー開催のKPIとなります。

ウェビナー開催にかかるコスト

目標とする申込者数を算出できたら、それを達成するためにはどういった集客を行えば良いのかを検討します。ここでコストについて考えます。

ここでは、ウェビナー開催のKPIとした申込者4,762名を集客するために、1件あたり5,000円の広告費がかかるとします。コスト総額は2億3810万円となります。

費用対効果の算出と予算の獲得

成果とコストを算出できたら、費用対効果を算出します。

ここでは、成約件数10件に平均単価の2,000万円をかけ、見込まれる新規経由の売上(LTV)は2億円になります。これに対してコストは2億3810万円です。

新規売上に占める新規獲得コストは約 12%(人件費、Web制作費、販管費等を除く)となり、費用対効果としては問題ないという判断になります。

もし、目標に対してコストがかかりすぎるなら調整を試みましょう。その上で、これらの計算を基に、必要な予算を要望します。

成果とコストにしっかりとした根拠があることで、予算を獲得しやすくなるはずです。

最適な予算配分のために意識したい4つのポイント

施策立案時に算出する費用対効果は、あくまでも見込まれる成果とそれにかかるコストを基にしたもので、実施の費用対効果とはずれが生じます。また、当然ながら予算には限りがあり、その範囲内で施策を実施していくことになります。

費用対効果のずれをできるだけ小さくして、マーケティング部全体として見込み通りあるいはそれ以上の成果を上げるために、以下のポイントを押さえて予算配分を行いましょう。

KPI設定やコスト算出はデータを基にする

各施策のKPIの設定やコストの算出は、まず、過去に実施した施策のデータを基にします。また、同時に市場動向や顧客データも参照して、市場や顧客の変化に対応しましょう。

自社のデータだけでは不十分だと感じる場合、競合や同業他社について、会社サイトや商品・サービス資料などで公開されている事例も参考にします。制作会社や広告代理店など外部の企業の支援を受ける場合、それらの企業が手掛けてきた事例も参考になります。

施策の優先順位を決める

予算には限りがあるので、いくら費用対効果の高い施策でも、立案した施策をすべて実施するのは難しいこともあるでしょう。また人的リソースの観点からも、同時に走らせることのできる施策には限りがあります。

施策を立案して費用対効果を算出したら、コスト以上の成果が見込める施策のなかで、実施の優先順位をつけます

費用対効果が高いことは基準のひとつですが、それ以外に、会社やマーケティング部としての目標への貢献度や、見込んだ成果が得られる可能性の高さ、市場や顧客の変化に応じた緊急性なども基準にします。

施策実施後は効果検証を行う

マーケティング施策は実施したら必ず定期的に効果検証を行い、施策の継続や新たな施策に向けて改善点を洗い出します

効果検証では、施策の実施前に算出した費用対効果に対し、実際にかけたコストと得られた成果はどうなのかを検証します。

想定していた費用対効果よりも結果が悪い場合、まず、コストと成果のどちらが原因なのかを確認します。そして、想定通りにいかなかった原因を探り、改善方法を検討します。改善が難しい場合は、その施策をいったん停止しましょう。

検証したデータはいつでも確認できるように管理して、今後の施策立案や予算獲得の際にも活用します。

施策の効果に応じて柔軟な配分を行う

マーケティング施策の効果検証では、その結果に基づき各施策の改善を行うとともに、施策全体の予算配分の見直しも行います。実施中の施策を以下のように分類しましょう。

  • さらにコストをかけることでそれ以上の成果が見込める施策
  • あまり成果が伸びそうにないのでコストを抑えたほうが良い施策
  • 現状維持の施策

定期的に予算配分の見直しを行うことで、予算を無駄にせず、マーケティング部全体で費用対効果を高めることができます。

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WRITING 執筆

加藤 淳平

加藤 淳平

経理・財務分野において、事業会社と税理士法人での実務経験を持つプロフェッショナル。
事業会社では経理・財務・経営企画分野で、決算業務、予実管理、予算策定、組織再編、J-SOX対応まで幅広く従事。税理士法人では財務・税務支援業務に加え、財務DDや株価算定業務を担当。
日商簿記1級、全経簿記上級の資格を有し、税理士試験(簿記論)合格。理論と実務の両面から、企業の財務・経理課題に対する深い知見を有する。

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