Google Search Consoleに AI分析機能が導入されました。この新機能により、データ分析の専門知識がなくても、会話のような指示で分析条件を指定するだけで、一瞬で複雑なパフォーマンスレポートを作成できるようになります。
本記事では、Google Search Consoleの最新機能と次世代のデータ分析について紹介します。
※本記事の内容は、2025年12月時点のものです。
Google Search ConsoleのAI分析機能とは
Google Search ConsoleのAI分析機能は、私たちが普段話すような言葉(自然言語)を通じて、レポートのフィルタリングや比較設定を自動化する機能です。専門的な操作知識がなくても、日常会話のような指示で分析したい内容を伝えるだけで、AIが自動的に適切な設定を構成してくれます。
例えば、「半年前と比較してクリック数はどうなっているか」と入力すると、AIがその質問の意図を理解し、適切な日付範囲の設定や比較条件を自動的に提案してくれるのです。提案された設定内容を確認して「適用」ボタンをクリックすれば、細かく手動設定せずとも分析結果が表示されます。
AI分析機能がもたらすメリット
この機能の最大のメリットは、レポート作成の準備時間を大幅に削減することで、本来重要な分析作業そのものに集中できる点です。
AI機能によってレポート作成時間を短縮できれば、「データから何を読み取り・どのような改善策を考えるか」という本質的な業務により多くの時間を割けるようになるでしょう。
また、日常会話のような感覚で質問できるので、Search Consoleの操作に不慣れな担当者であっても、データ分析を行いやすくなります。より多くのメンバーがデータドリブンな意思決定に参加することで、マーケティング活動全体の質の向上につながる可能性があります。
AI分析機能の注意点
メリットが多いAI分析機能ですが、現時点ではいくつかの制限事項があることに注意が必要です。
まず、この機能は限られた一部のサイトでのみ利用可能な実験段階にあります。段階的に展開されていく見込みなので、すべてのユーザーがすぐに利用できるわけではないことを押さえておきましょう。
また、この機能が適用されるのは「検索結果」のパフォーマンスレポートのみで、DiscoverやGoogleニュースのレポートにはまだ実装されていません。また、表の並べ替えやデータのエクスポートなどの操作は実行できません。これらの機能への展開は、今後のアップデートを待つ必要があります。
AI機能全般に言えることですが、入力内容を誤解して解釈してしまう可能性はゼロではありません。自動設定されたフィルタが本当に自分の意図した通りになっているか、最終的な確認は必ず自分で行いましょう。
AI分析機能を使うとできること
AI分析機能を使うとどのようなことができるようになるのか、具体的にみていきましょう。
複雑なフィルタリングを一度に実行
この機能を使うと、複雑なフィルタ設定を自然言語で実行できるようになります。
従来のSearch Consoleでは、複数の条件を組み合わせてデータを絞り込む際、以下のようにいくつもある各項目を個別に設定する必要がありました。
- 検索クエリ
- ページURL
- 国
- デバイスの種類
- 検索での見え方
- 日付範囲 など
しかし、AI分析機能なら「過去3か月間で、マーケティングを含むモバイル検索のクエリを表示して」と入力するだけで、「期間・キーワード・デバイス」という3つの条件を組み合わせた高度なフィルタリングを一度に設定できます。
期間比較の自動設定
期間比較の設定自動化も可能です。前年同期比較や前月比較といった定型的な分析を頻繁に行う場合、この機能によって作業時間を劇的に短縮できるでしょう。
従来は特定の期間同士を比較する際、カレンダーから日付を選択したり、カスタム日付範囲を手動で入力したりする必要がありました。しかし、AI機能を使えば「今期の/blogを含むページのトラフィックを昨年の同じ四半期と比較して」と指示を出すだけで、AIが適切な日付範囲を自動計算して比較設定を構成してくれます。
最適な指標の自動選択
指標の選択も自動化できます。
Search Consoleのパフォーマンスレポートで確認できる主要な指標は、クリック数、表示回数、平均CTR、平均掲載順位の4つです。AI分析機能は、質問内容に応じて適切な指標を選択して表示してくれます。
例えば、「過去28日間におけるアメリカでのクエリの平均CTRと平均掲載順位を表示して」と指示すれば、地域フィルタと指標選択、日付範囲設定がすべて自動で行われます。
MCPサーバーとの連携による次世代の分析環境
今回紹介したSearch ConsoleのAI分析機能の登場は、Googleが進める「生成AIとサービスの統合」という大きな流れの一部に過ぎません。
実は、Googleは2025年12月に、すべてのサービスで生成AIと接続できるMCP(Model Context Protocol)サーバーを提供すると発表しています。これにより、デジタルマーケティングの分析業務に大きな変化が生じる可能性があります。
MCPサーバーとは
MCPサーバーは、生成AIやAIエージェントが外部のツールやデータソースと連携するための、共通の接続ルールです。AIをあらゆるツールやデータに標準的な方法で接続できる仕組みなので、「AIのUSB-C」とも呼ばれています。
これまでAIと各種サービスをつなぐには、それぞれ個別に複雑な設定が必要でした。しかし、GoogleがMCPサーバーを用意することで、開発者がAIをGoogleサービスに接続する際の手間が大幅に削減されます。
MCPサーバーの提供状況
Googleは2025年12月に、リモートMCPサーバー※1の提供を開始しました。現時点で対応しているのは、以下の4つのサービスです。
- Googleマップ
- BigQuery
- Google Compute Engine
- Google Kubernetes Engine
Google Analytics 4(GA4)については、2025年7月に公式MCPサーバーがすでにリリースされています。こちらはローカルMCPサーバー※2なので設定方法が異なりますが、MCPという共通のルールで動いているため、一度設定が完了すれば他のGoogleサービスと同じように連携が可能です。
※1:Googleが管理・運用してくれる、インターネット経由でアクセスするMCPサーバー
※2:クラウド環境ではなく自分のパソコンなどにインストールして動かすMCPサーバー
MCPサーバーの活用例
MCPサーバーを活用すると、以下のようなことが可能になります。
- Googleマップ
→「この物件から最寄りの競合店までの距離は?」と質問するだけで、正確な地理情報や天気予報にアクセスして回答 - BigQuery
→簡単な質問をするだけで、顧客データや販売データの高度な分析を実行※
さらに、複数のサービスを組み合わせると、「BigQueryで売上データ※から収益予測を行い、Googleマップで周辺の競合を調査し、配送ルートの妥当性を検証して、小売店の最適な出店場所を見つける」ということも可能です。
このように、従来は複数の専門家が関わる高度な分析作業を、AIだけで実行できるようになります。
※BigQueryに顧客データや販売データなど必要なデータが格納されている必要があります。
MCPサーバー統合がデータ分析にもたらす影響
GA4は、すでに公式のMCPサーバーに対応しており、設定を完了すればAIに自然言語で質問するだけでデータ分析ができるようになっています。例えば、GA4でMCPサーバーを通じて「先月の訪問者数は?」「コンバージョン率が高いページは?」といった質問にも、AIがすぐに答えてくれます。
今後、Search ConsoleのAI分析機能にもMCPサーバーが実装されれば、さらに分析作業が効率化されていくでしょう。
例えば、GA4とSearch Consoleの両方のデータを分析したい場合、従来は次のように複数のプロセスを経る必要がありました。
- Search Consoleを開いてデータを確認
- GA4を開いてデータを確認
- それぞれのデータをエクスポート
- 手作業で統合して分析
しかし、MCPサーバーで各ツールがつながれば、「Search Consoleで流入が増えているキーワードについて、GA4でのコンバージョン率を教えて」と聞くだけで、AIが自動的に両方のデータを取得して分析結果を教えてくれるようになるのです。
さらに、高度な分析ツールであるBigQueryと連携すれば、専門知識がなくてもより複雑な分析が可能に。「先月のオーガニック検索経由の訪問者のうち、3回以上訪問したユーザーのコンバージョン率は?」といったレポートも、日常会話感覚で答えが得られます。
まとめ
Google Search ConsoleのAI分析機能は、日常会話のような簡単な指示で、誰でもデータ分析の効率を大幅に向上させられる画期的な機能です。複雑なフィルタリングや期間比較、指標選択を自動化できれば、PDCAサイクルを高速で回しやすくなりますし、マーケターは本質的な分析業務により多くの時間を割けるようになるでしょう。
現時点ではまだ実験段階の機能ですが、今のうちからデータ活用の文化を育てておくことで、今後のマーケティング活動で大きなアドバンテージを得られるはずです。AI時代のデータ分析は、もはや専門家だけのものではなく、すべてのマーケターが活用すべき基本的なスキルになりつつあります。
出典:Google Search Central|新しい AI を活用した構成で Search Console の分析を効率化する
出典:Google Cloud|Google サービスにおけるモデル コンテキスト プロトコル (MCP) サポートの発表
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