デジタル広告の世界では、AIによる自動化が急速に進んでいます。Google広告のPerformance Max(P-MAX)やMeta広告のAdvantage+キャンペーンなど、各プラットフォームが次々と高度なAI機能をリリースしていますが、実際の現場ではどの程度活用されているのでしょうか?
今回、広告運用に携わる実務者125名を対象に、
- AI機能の活用状況や成果
- 導入を阻む課題
についてアンケート調査を実施しました。
その結果からは、「AIの可能性」と「現場のリアル」のギャップが浮き彫りになっています。本記事では、調査結果を深掘りしながら、Webマーケティングのスペシャリストとしての考察をお届けします。
INDEX目次
- Google広告のAI機能活用状況|約7割が「ほぼ活用していない」
- Google広告で活用されているAI機能|「自動生成テキスト」が最多
- Google広告でAI機能を活用しない理由|「成果が安定しない」「統制が難しい」がトップ2
- Google広告でのAI導入後の成果|約4割が「検証中」、改善実感は約1割
- Meta広告のAI機能活用状況|約7割が未活用
- Meta広告で活用されているAI機能|「クリエイティブのエンハンス」が最多
- Meta広告でAI機能を活用しない理由|課題が分散、懸念は多岐にわたる
- Meta広告でのAI導入後の成果|改善実感は14.4%にとどまる
- 株式会社ゴンドラ シニアコンサルタント 藤原洋平による総評
- AI時代の広告運用に向けて
- AI時代の広告運用戦略でお悩みの企業へ
- 調査概要
Google広告のAI機能活用状況|約7割が「ほぼ活用していない」

Google広告運用におけるAI自動化機能(P-MAX/AI MAX/自動生成クリエイティブなど)の活用状況を調査した結果、「ほぼ活用していない」との回答が最も多く68.0%を占めました。
一方、「一部案件で活用」が16.8%、「ほぼ全案件で活用」が5.6%と、約22%の運用者がすでにAI機能を取り入れています。また、「機能は把握しているが未活用」は9.6%にとどまり、認知と活用の間には大きな開きがあるようです。
約7割が慎重な姿勢を取る背景
GoogleはAI機能を積極的に推進していますが、現場の運用者の7割近くが慎重な姿勢を取っているのには理由があります。
広告運用では、必ず以下の3つの要素が求められます。
- クライアントにきちんと説明できること
- 安定した成果を出せること
- 予算の使い道を明確に示せること
AIの判断がブラックボックスになってしまうと、こうした要件を満たすのが難しくなります。そのため、運用者としては導入に踏み切りづらいのが実情なのです。
ただし、P-MAXについては状況が変わりつつあります。リリース当初は検索広告面、特に顕在キーワードばかりに配信が集中する問題がありましたが、現在は除外キーワードで配信をコントロールできるようになり、特定チャネルへの偏りも改善されてきました。成功事例が増えてくれば、活用比率も変わってくるかもしれません。
Google広告で活用されているAI機能|「自動生成テキスト」が最多

Google広告で実際に活用されているAI機能を聞いたところ、「AI機能は使用していない」が69.6%で最多でした。
AI機能を活用している層では、「自動生成見出し/説明文」が14.4%と最も多くなりました。これは、運用者がリスクの低い部分からAIを試していることの表れでしょう。
テキスト生成は、画像・動画生成やキャンペーン全体の自動化に比べて修正しやすく、ブランド毀損のリスクも低め。従来のA/Bテストの延長として捉えやすいという特徴があり、「コントロールできる範囲で使う」という姿勢が見て取れます。
一方、P-MAX(7.2%)やAI Max(6.4%)といった包括的な自動化機能は1桁台にとどまっており、「AIにすべてを任せること」への抵抗感はまだ根強いようです。
Google広告でAI機能を活用しない理由|「成果が安定しない」「統制が難しい」がトップ2

Google広告でAI機能を使わない・限定的にしている理由を聞いたところ、上記のような回答が得られました。
「成果が安定しない」「統制が難しい」がトップ2という結果は、AI導入における最大の壁を表しています。
- 月次レポートの作成
- 予算配分の説明
- 施策効果の検証
上記のいずれの場面でも、「AIが自動で最適化しました」だけでは説明責任を果たせません。広告運用の現場では、安定性とコントロール性が重要だからです。
また、「従来運用で十分成果が出ている」という回答も目立ちます。短期的には合理的な判断ですが、競合がAIで効率化を進めた場合、中長期的には差がつく可能性もあります。
一方で、「AI機能をフルに活用している」と答えた8.8%の存在も見逃せません。結果重視の環境や、新しい手法に取り組みやすい体制があるのでしょう。こうした層の成功事例が共有されれば、業界全体のAI活用が進むきっかけになるかもしれません。
Google広告でのAI導入後の成果|約4割が「検証中」、改善実感は約1割

Google広告でAI機能導入後の成果を聞いたところ、上記の結果となりました。
「まだ検証中」が41.6%、「改善なし/悪化」が24.0%という結果は、AI機能の効果がまだはっきりしない現状を映し出しています。
明確な改善を実感しているのは11.2%。ネガティブな評価(24%)を大きく下回っています。AI機能は万能ではなく、適切な設定や十分な学習期間、案件との相性が成果を左右するということでしょう。
「検証中」が最多なのは、AIの学習に時間がかかることに加え、ブランド認知や長期的なCV貢献など、従来のKPIでは捉えにくい効果が出ている可能性もあります。短期の数値だけでなく、長い目で効果を見極める姿勢が求められそうです。
Meta広告のAI機能活用状況|約7割が未活用

Meta広告(Facebook広告)でのAI自動化機能(Advantage+/クリエイティブ生成/自動placementなど)の活用状況も、Google広告と同様の傾向でした。「ほぼ活用していない」が68.8%で最多です。
「ほぼ全案件で活用」の割合がGoogle広告(5.6%)よりも低い(2.4%)点が目を引きます。
その要因として、以下の3つが考えられます。
- Meta広告のAI機能(Advantage+など)は比較的新しく、検証事例がまだ少ない
- ビジュアル重視の媒体なので、クリエイティブの品質管理がより重要で任せにくい
- Meta独自のオーディエンス設計を手放すことに抵抗感がある
また、「機能は把握しているが未活用」が15.2%とGoogle広告(9.6%)より高いのも特徴的です。
また、最近はAdvantage+機能がデフォルトでONになっているケースが多く、意図せずAI機能が動いてしまい、想定外のクリエイティブが配信される事態が発生しています。こうした「知らないうちにAIが動いている」状況が、かえって不信感につながっている可能性もありそうです。
AI活用を進めるには、機能の透明性を高め、広告運用者が適切にコントロールできる設計が重要になるでしょう。
Meta広告で活用されているAI機能|「クリエイティブのエンハンス」が最多

Meta広告で実際に活用されているAI機能を聞いたところ、「AI機能は使用していない」が69.6%で最多でした。AI機能を活用している層では、上記の順で利用されています。
前述のとおり、Meta広告ではクリエイティブの品質管理が重要で、AIに全面的に任せにくい傾向があります。
そのなかで「クリエイティブのエンハンス」がトップになっているのは、既存アセットをベースにした改善であれば、ブランドガイドラインから大きく外れにくく、効果も比較しやすいためと考えられます。制作コストの削減というメリットも明確なので、まずはここから着手する運用者が多いようです。
「生成AIによる画像生成」と「自動テキストバリエーション」が同数(各8.0%)というのも興味深い点です。Meta社が注力しているジェネレーティブAI機能が、少しずつ浸透し始めているようです。
ただし、AI生成のクリエイティブが意図しない表現になったり、ブランドイメージに合わない素材が配信されるリスクは依然として懸念材料です。事前チェックの仕組みやブランドセーフティ機能の充実が、普及のカギを握るでしょう。
Meta広告でAI機能を活用しない理由|課題が分散、懸念は多岐にわたる

Meta広告でAI機能を使わない・限定的にしている理由を聞いた結果、上記の回答が得られました。
Google広告と比べると、Meta広告では課題が分散しています。
AI活用はリスクが高いと考えられている
「成果が安定しない」「学習コストが高い」「従来運用で十分」が同率トップ(各18.4%)でした。
Meta広告は既存の運用ノウハウが確立されているため、新たにAIを学ぶ手間に見合うメリットが見えにくいのかもしれません。すでに成果が出ている手法があるなら、あえてリスクを取る必要性を感じないと考える層が一定数存在しています。
「品質・ブランドリスクがある」が13.6%と比較的多いのも、ビジュアル重視のMeta広告ならでは。AIが生成するクリエイティブの品質やブランドとの整合性に対する懸念が強いことがわかります。
再現性や成果に対する懸念も
Meta広告でのAI機能に「再現性がない」と回答した人数が15.2%と、Google広告における同回答(11.2%)より多いのは、Meta広告のアルゴリズム変動に対する不安の表れでしょう。AI機能を使うとさらに予測が難しくなる、という声があるようです。
また、「成果が安定しない」が18.4%と上位に入っている点にも注目すべきでしょう。AI機能を活用した運用者の一部が、期待した安定性を得られずに懸念を抱いている状況がうかがえます。
一方で、「AI機能をフルに活用している」という回答もあったので、適切な使い方を見つけられれば成果を出せる可能性は十分にあるといえます。
Meta広告でのAI導入後の成果|改善実感は14.4%にとどまる

Meta広告でAI機能導入後の成果を聞いたところ、上記の結果となりました。明確な改善を実感しているのは14.4%。期待に応えられていない現状が見えてきます。
また、「横ばい」が27.2%、「改善なし/悪化」が24.8%という数字は深刻です。約2人に1人が、AI導入で成果が上がらなかった、あるいは下がったと感じています。
「検証中」が最多(33.6%)なのは、効果がはっきりせず、続けるべきか判断しかねている運用者が多いことを示しています。「横ばい」も27.2%と多く、「手間をかけてAIを入れても結局変わらない」という実感が、積極活用への意欲を削いでいるようです。
実際に試した運用者の多くが期待した成果を得られていないため、周囲も様子見を続けざるを得ない、という悪循環が生まれているのかもしれません。
株式会社ゴンドラ シニアコンサルタント 藤原洋平による総評
今回の調査結果の分析から、AI時代の広告運用において重要な3つのポイントがみえてきました。
1. 「AI不信」ではなく「合理的な判断」
約7割がAIを「ほぼ活用していない」という結果は、決してAIを否定しているわけではありません。「成果が安定しない」「統制が難しい」を理由にAIの活用を避けることは、クライアントや社内への説明責任を果たす専門家として当然の判断です。
むしろ重要なのは、AI活用に懸念を抱くユーザーの存在によって、課題が明確化されることです。P-MAXに除外キーワード機能が追加されたように、運用者の声がプラットフォームの改善につながっています。
2. 部分活用という「賢い選択」
「自動生成テキスト」「クリエイティブエンハンス」が最多なのは、リスクが低くコントロールしやすい部分からAIを試すという堅実なアプローチの表れです。
P-MAXやAdvantage+の活用が少ないのは、まだ時期尚早という冷静な見極めです。現時点では、成果を確認しながら徐々に広げていく段階的な導入が現実的でしょう。
3. 「検証中」が最多——広告でのAI活用の判断には長期戦の構えが必要
Google広告で41.6%、Meta広告で33.6%が「AI導入後の成果をまだ検証中」と回答。これにより、AIの学習には従来の施策以上に時間がかかるという現実がみえてきました。
短期のKPIだけでなく、ブランド認知やLTVへの貢献など、長期的な視点での評価も必要です。「横ばい」が約3割という結果は、「劇的な効果はないが、悪化もしない」という現実的な立ち位置を示しています。
AI時代の広告運用に向けて
AI機能は「運用者を置き換えるもの」ではなく、「より戦略的な仕事に集中するためのツール」です。
デジタル広告の世界で、AIをまったく使わない時代に戻ることは考えにくく、この流れは止まりません。今は慎重な姿勢の運用者も、いずれはAIとの向き合い方を考える場面が来るでしょう。
大切なのは、自社の状況や案件の特性を見極めながら、リスクを管理しつつ段階的に知見を積み重ねていくこと。小さく試して、失敗から学び、成功パターンを見つけていくことです。そのプロセスこそが、AI時代の広告運用者に求められる姿勢だと考えます。
本調査が、「AIをどう使いこなすか」を考えるヒントになれば幸いです。
AI時代の広告運用戦略でお悩みの企業へ
AI機能の活用を含む最適な広告運用戦略を構築するには、従来のノウハウに加えて、AI時代を見据えた包括的なアプローチが欠かせません。
株式会社ゴンドラでは、貴社と同じゴールを見据えた伴走型支援を提供しています。Google広告・Meta広告の運用最適化から、AI機能の適切な活用判断まで、各分野のスペシャリストが一社一社に合った提案をいたします。
- P-MAX・Advantage+の導入・運用支援
- AI時代の広告運用戦略立案・実行
- 成果測定・分析手法の構築
AI時代に対応した広告運用戦略の構築や、デジタルマーケティング支援をお求めの企業は、ぜひゴンドラにご相談ください。
ゴンドラでは広告での獲得だけではなく、LTVや顧客エンゲージメントを向上させる統合型支援も可能です。デジタルマーケティング全般のご相談は、お気軽にお問い合わせください。
調査概要
調査実施会社:株式会社ゴンドラ
調査対象:広告運用者125名
調査期間:2025年11月11日〜11月18日
調査方法:インターネット調査
回答形式:全質問複数回答可(各数値は回答者に占める割合)
※本調査は2025年11月18日に実施完了されたものです。AI検索技術は急速に発展しているため、最新の動向については定期的な情報収集をおすすめします。
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WRITING 執筆
藤原 洋平
Google、Yahoo! JAPANを中心としたリスティング広告、Facebook、instagram、X(旧Twitter)、LINEを中心としたSNS広告、アフィリエイト広告、インフルエンサーキャスティングなど、webマーケティング全般を手掛ける。
これまで数多くのセミナー・ウェビナーに登壇。書籍「BtoBマーケティングの基本 IT化のインパクトを理解する12 の視点」(日経BP)を執筆。
